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桑田佳祐が命を懸けた、MUSICMAN全曲レポート

2/26は僕の大好きなアーティスト、桑田佳祐の誕生日!

それを記念して勝手に大好きなアルバム"MUSICMAN"を紹介していこうと思います。

 

 

 

MUSICMANとは?

2011年に発売された桑田佳祐の4枚目のアルバム。過去にリリースされたものは、ポップス、フォーク・ソング、ロックミュージックといったコンセプトアルバムの作りだった。MUSICMANはそれらに反し、多様性のあるオムニバスアルバムを発表した。

 

制作中、桑田佳祐は食道ガンを患い、発売とツアーが延期になった。そのため、このアルバムは待ちに待った作品だった。作品のテーマは病気の前と後で大きく変化した訳ではないと言われている。

また、3月に起きた東日本大震災により、更にタイムラインとそれぞれの曲のテーマがリンクしたようにも思える作品となり、僕にとって皆さんに聞いてほしい1枚である。

 

売り上げは初週27.3万枚の売り上げを獲得。

アルバムでは、4年代首位を獲得した。

 

個人的な思い入れ

一人のファンとして待ちわびたアルバムでした。また、自分にとってこのアルバムなしでは10代をを語ることが出来ないくらいの作品です。高校に入学する時に出た作品で、この曲と一緒にI Podを買って毎日聞いていた。

また、想像を絶した東日本大震災の時にも助けられたアルバムだった。"今がどんなにやるせなくても 明日は今日より素晴らしい" *1直接被災した人間ではないが、この言葉のパワーに助けられたし、今もその言葉を持ち暮らしている。


全曲レビュー

レビュー方法

今回、楽曲の特徴(サウンド面や歌詞)とアルバム全体の流れの2つを軸に紹介していこうと思います。あくまで、僕の主観ですのでよろしくお願いします。

 

 

 

現代人諸君‼(イマジン・オール・ザ・ピープル)

バリトンサックスとギターの重いリフから始まるロックサウンド。その当時に渦巻いていた社会への不安をテーマにした曲で、タイトルはジョン・レノンの ”imagine” から拝借したもの

 

このアルバムが1つのライブとするならば、オープニングの役目をしっかり果たしている。イントロでの高揚感、リスナーを曲の世界へ引き込む言葉遊び、ダイレクトなメッセージのサビで構成された楽曲は、MUSICMANの世界への扉を空けてくれる。

 

ベガ

AORサウンドで、キーボードやシンセベースなどのデジタルサウンドをメインにした楽曲。ミュートギターのパートや、ギターソロなども特徴的。

織姫と彦星の七夕の悲哀をテーマに歌っている。

この曲の重要なポイントは、前と次の曲が持つテンションに緩急を与えていることだ。そのため、リスナーを疲れさせずに、次の曲へ運ぶ役目を果たしている。


いいひと〜do you wanna be loved?〜

サイレンのようなイントロが鳴り響き、報道番組のようなメロディがボーカルへと繋げていく。80年代風のシンセサウンドと共に、8ビートの効いたドラムでシンセロックや、テクノポップにも似たような楽曲だ。テーマは、”現代人諸君‼︎”同様、社会風刺で、内閣総理大臣へのメッセージ性の込めた楽曲である。


”ベガ”から一転し、再びメッセージ性の強い曲が来たが、このアルバムのオープニングの流れを、締めるには最適で、”現代人諸君‼︎”には果たせない力を持つ楽曲だということをリスナーに示している。


SO WHAT?

ドラムタムの力強くも細かいリズムがサウンドに緊迫感を与え、バリトンサックスのメインとなるフレーズも重苦しさを与える。この曲はアルバムの中のご当地ソングの1つ。テーマは、沖縄の米軍基地問題を揶揄しながらも男女の色恋沙汰を描いた歌詞である。

 

雰囲気は打って変わり、リスナーを大人な世界へ連れていく。オルガンの使い方がすごくうまい。歌詞に"The doorsなんかを鼻歌交じりで Ah "*2というフレーズがある。このレビューを書くにあたって、The doorsを聞いてみたが、サウンド面にあたってインスピレーションを受けているのではないかと思った作品だった。


古の風吹く杜

前4曲とは打って変わり、サザンオールスターズを聴いてるような錯覚に陥る、サウンドを前面に出したポップソング。風が吹いてるのを再現するようなストリングスのフレーズや、キーボードのカウンターメロディが楽曲に奥深さを与えている。この曲もご当地ソングであり、鎌倉をテーマにした楽曲である。

ポップスではあまり使うことのない『誘なう』『跋扈』などの複雑な日本語を織り込ませ鎌倉の情景を表現している。

 

最初の4曲でこのアルバムに多様性があることを示した。同時に『私が聞きたいサザンみたいな曲はどこ?』と思う人もいるはず。お待たせしました!前4曲があることで、この曲が美しく聞こえます。まさに桑田の真骨頂といえる作品。

 

恋の大泥棒

菅と弦で構成されたビッグバンドサウンドの楽曲。ポール・マッカートニーの”live and let die”に近く、007をフィーチャーしたような楽曲である。

 

ストーリーを読んでるような歌詞に、分厚いサウンド達のおかげで情報量が多い。しかし、映像を浮かべたい、映画音楽のような作品である。
古の風吹く杜とこの曲がアルバムの中でポップソングの役割を果たし、リスナーの心を掴むことができる。

 

銀河の星屑

バイオリンがリードし、80年代を感じるロックともシンセロックとも言える、ミクスチャーな楽曲である。テーマは、死に際に立つ男の話。
ガットギター・フルート、バイオリンを中心に構成されているが、シンセのサウンドが楽曲にデジタル要素を与え、斬新な仕上がりだ。ライブでは迫力のある演奏が特徴であり、実際に聞くと盛り上がる曲。

前の2曲で作られたポップスの世界は、死をアップテンポなポップスで向き合うリード曲へ導いてくれる。ただ、歌詞の内容は"死に際"、”まだ人生にゃ 未練がいっぱい”*3など、ダイレクトなワードがいくつかある。

 

前の2曲と後の流れの間に立つ中和剤となる重要な曲だ。またリスナーを更に、人間が持つ心の深いところに導いていくことになる。その理由は”グッパイ・ワルツ”、”君にサヨナラ”をで明らかになる。

 

グッパイ・ワルツ

タイトルにある通り、ワルツ調の楽曲。ドラムのハイハットを駆使し、重苦しいサウンドを表している。ドラム響きを最大限利用し、モタつき感を表現。サウンド面でも聞いていて勉強になる楽曲である。

 

”銀河の星屑”から始まる、『悲しみ・死との対峙3連発』の2曲目である。アルバムの中で一番重くのしかかる作品かもしれない。"川に浮かんだ月にはなれず 川に流され参ります"*4 苦難を経験した人だからこそ出てくる言葉だが、これほど情感のある表現を出来る人はいないと思う。

 

君にサヨナラを

竹内まりや松たか子などのギタリストとして活躍する佐橋佳幸と一緒に製作した曲であり、コーラスに原由子が参加している。ギターのパートは7つあり、細部までこだわったミディアムテンポの楽曲である。

 

亡くなった人との別れをテーマにした歌詞であり、『悲しみと向き合う曲3連発』の最後を飾る曲。『涙を流すより笑顔で人を見送るのが、生きている人たちのやることなんじゃないの?』そう語られている気がする。

 

 


君にサヨナラを(初回限定盤) [ 桑田佳祐 ]

 

 

続きのレビューは次の記事で!

 

 

*1:月光の聖者達

*2:曲中の歌詞

*3:曲中の歌詞

*4:曲中の歌詞